東北大学未来科学技術共同センター教授の小濱泰昭氏が
2012年1月26日に発表した「Mg燃料電池」は、再生可能であるところに特長がある。
「太陽エネルギーを使ってMgを精錬するめどがついており、効率よく量産可能な燃料電池が実現する」(小濱氏)。
Mgは地球上で8番目に多い元素であり、海水にもMgCl(塩化マグネシウム、にがりの成分)として大量に含まれている。 レアメタル問題を起こすこともなく、人体にも無害だ。
マグネシウムが変えるか、日本のエネルギー問題
マグネシム燃料電池はどのような点で優れているか
電池としてのエネルギー密度が高く、小型化に向く
小セルでの実験値は1464mAh/gであり、これはリチウムイオン二次電池の5倍以上に当たる。 今回開発したMg燃料電池はまだ小型化の取り組みが十分進んでいないが、鉛蓄電池(35Wh/kg)や、ニッケル水素二次電池(60Wh/kg)を既に上回っており、リチウムイオン二次電池(120Wh/kg)がすぐ目の前に見えている性能だ)。
低コスト化が可能
。原料金属が安価であることなどから「電池の実装について協力を求めた古河電池によれば、60Ah、12Vという開発品と同じ容量のPb電池(2万円)を示して、この半分にはできる」(同氏)という。つまり1万円が目標になる。
「寿命」が長い
ここで言う寿命とは、いわゆるサイクル寿命ではない。電池内部にエネルギーを蓄えたまま、どの程度の時間、放置できるかという意味での寿命だ。二次電池は自己放電を起こすため、満充電状態にしても数カ月単位でエネルギーを失ってしまう。「Mg燃料電池は電解液を入れない状態で放置すれば50年、100年持つと考えている。このような性質は非常用電源として優れている」(小濱氏)*4)。
マグネシム燃料電池はエネルギー問題に対してどのような意味を持つのか
小濱氏
これまでは経済発展のために原子力発電は仕方がないことだ、というのが国全体の方針だった。このような方針の前提は、電気は貯められないものだという主張である。だが、私のMg燃料電池は、太陽エネルギーをMgの形に貯めることができる。Mgはモノだから、輸送も可能だ。送電線で長距離送電する場合と異なり、効率低下もない。
これからは「燃料を作る時代」に入ったということを主張したい。化石燃料や原子力はもう50年もたない。その後は燃料物質を作るしかない。ちょうど食料を調達するために、当初は直接採取だったものが生産(農業)に変わっていったようなものだ。 燃料を作る際、太陽エネルギーを利用すれば、Mgを作り出して消費しても、元のMgに復元できる。このようなサイクルを成り立たせる研究を続ける。
エネルギー物質をくることができ、 かつ、それを利用できるような未来になってほしいとおもう。